第35章 橘結衣こそ橘家の本物のお嬢様

春山幸太郎は眉をひそめた。

「どうした?」

春山明奈は顎に手を当て、考え込む。

「亡くなった使用人の子を引き取る――そういう話自体は珍しくない。でも、使用人の子に“実の娘の部屋”を明け渡す家なんてある?」

「お父さん。もしお父さんだったら、そんなことする?」

春山幸太郎は即座に首を横に振った。

「するわけがない!」

話の筋が逆だ。筋が通っていない。

明奈は、昨夜のあの少女の、見下すような顔つきを思い出す。

「橘家でも、ずっとあんなに我が儘なの?」

「そうよ!」春山一花が勢いよくうなずいた。「橘家で会うたび、いつだって偉そうでさ。どこにそんな度胸があるのか知らないけど、ただ...

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